予防接種がきっかけで、帯状疱疹になったのでしょうか
- 4歳・女の子
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9歳の娘は1歳過ぎに水疱瘡(みずぼうそう)の予防接種を受け、その後、水疱瘡にはならずに、7歳のときに帯状疱疹(たいじょうほうしん)になりました。4歳の娘は同じく1歳過ぎに水疱瘡の予防接種を受け、2歳半のときに、長女の帯状疱疹が感染し、軽い水疱瘡になりました。そしてつい最近、新型インフルエンザの予防接種を受けた数時間後に、帯状疱疹になりました。この2人はもう水疱瘡や帯状疱疹にはならないでしょうか?何かの予防接種が引き金になって帯状疱疹になることがあるという記事を見たことがあるのですが、今回の4歳の子の場合に当てはまるでしょうか?
また、日本とアメリカでは水疱瘡のワクチンの強さに違いがありますか?(日本の水疱瘡のワクチンは弱めにしてあると聞きました)。現在、ハワイ在住で、三女はこちらで予防接種を受けています。 - (おうこり さん)
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今回は水痘(水疱瘡)・帯状疱疹とワクチンの関係です。水痘のワクチンを接種しても、水痘の患者と接触する機会がないと徐々に抗体は低下します。特に5年以上経過すると抗体価が低下して、ワクチン接種後にもかかわらずウイルスに感染しやすくなります。このことを踏まえた上で、アメリカの事情も加えて回答します。
水痘帯状疱疹ウイルスとワクチン
水痘と帯状疱疹の原因ウイルスは同じものです。その名を水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)と言いますが、このウイルスに感染すると水痘を起こし、水痘が回復してもウイルスはヒトの脊髄の神経節に潜んでいます。そして加齢など免疫状態が低下した時に再び活動して帯状疱疹を起こします。また、VZVに対する抗体がないと、周囲で水痘や帯状疱疹の発症者がいると感染してしまうことがあります。
ワクチンについて
現在世界で使われている水痘ワクチンは日本で開発されたワクチン株が元になっています。元のワクチンは同じで、日米でワクチンの差はないと考えて良いでしょう。ワクチン接種による抗体陽性率は9割前後で、ワクチン接種後の水痘罹患(りかん)率は10−20%です。ワクチン接種後の帯状疱疹は自然感染に比べてはるかに少なく、10年間で一般健康小児における帯状疱疹は数えるほどです。
日米の水痘ワクチン接種状況
使用するワクチンに差はありませんが、ワクチン接種率は日米で大きく異なります。日本における水痘ワクチン接種率は30%程度です。このため日本では水痘にかかってしまう方が多く、ときに流行があります。ワクチンを接種したあとも水痘の患者さんと接触する機会が多く、ウイルスの刺激にさらされるため抗体が長く働きます。アメリカでは水痘ワクチンの接種率が約90%です。このためアメリカでは水痘の流行は少なく、水痘の患者さんと接触する機会も少なくなります。水痘ウイルスの刺激を受けることがないため、抗体は長い期間の間に弱くなってしまいます。特に5年以上経過していると抗体の力が弱くなります。また、日米にかかわらず一般的に、18カ月未満にワクチンを接種した場合と、18カ月以上経過してからワクチンを接種した場合を比べると、18カ月未満に接種した時のほうが、接種後の水痘罹患の可能性が高くなると言われています。
今回の場合
(9歳のお子さんの場合)
9歳のお子さんはワクチンを接種していますが、水痘に対する抗体が十分作られなかったか、または抗体価が減衰してしまったことが考えられます。(ワクチン接種して5年以上経過しているため)。抗体がないと水痘に感染しますが、ワクチンを接種していれば症状は軽く済むことが多く、不顕性感染(感染しているが症状が出ないもの)をおこした可能性が考えられます。このためVZVが体内に潜み、結果として帯状疱疹を発症したと思われます。免疫機能に異常がなければ、今後水痘や帯状疱疹になることはないと思います。(4歳のお子さんの場合)
4歳のお子さんも9歳のお子さん同様に、抗体の獲得が不十分だったことが考えられます。このため9歳のお子さんからVZVが伝染してしまい、水痘を発症したと思われます。インフルエンザワクチンとの関係は不明ですが、ワクチン接種により免疫機能などに影響が出て帯状疱疹を発症した可能性はあります。(9歳のお子さんのように帯状疱疹を発症して、そのタイミングが偶然インフルエンザワクチン接種と重なった、ということも否定はできませんが)。9歳のお子さんと同様で、免疫の異常がなければ今後水痘や帯状疱疹を発症することはないと思います。
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