「ものが大きくなったり、小さくなったりして見える」と訴えてきました
- 1カ月前から
- 8歳4カ月・男の子
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2月の初め頃から、「ものが大きくなったり、小さくなったりする」と言い始めました。最初はそんなことあるはずがないと思い、相手にしなかったのですが、どうやら本当らしいのです。特に何かに集中しているときに限られたことではなく、テレビを見ていたり、ポスターをながめていたりするときでも起こるそうです。
2月半ばに小児科へつれていきましたが、小児科的には特に問題ないといわれ、もしひどくなるようなら、眼科へ行ってくださいと言われました。そこで、眼科へつれていったのですが、特に異常はなく、疲れ目の目薬を処方されましたが、あまり効果はないようです。
最近は見え方と同時に「変な声が聞こえる」ということもありました。特に体調に異常が出ているわけではないのですが、本人が大変怖がっています。今年1月から、母親である私が仕事に出始めたこともあり、それがストレスとなって現れているのかと、心配です。どういった原因が考えられるでしょうか?また、何科を受診したらいいでしょうか?何かできる対処法はありますか? - (ウルスラ さん)
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物が大きくなったり小さくなったりして見える、という訴えです。おそらく“不思議の国のアリス症候群”と呼ばれるものと考えられます。上気道炎やEBウイルス感染症後に、発症することがあります。また片頭痛(へんずつう)や後頭葉てんかんとの関連も言われています。EBウイルス感染症後の場合などは、自然回復するようですが、片頭痛や後頭葉てんかんの場合はもともとの病気の治療が必要です。受診をするならば、小児神経を扱っているところが良いでしょう。
不思議の国のアリス症候群とは
不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland syndrome:AIWSと略します)は、イギリスのルイス・キャロルの作品であるAlice's Adventures inWonderland(不思議の国のアリス)に由来します。AIWSでは、物や人が大きく見えたり小さく見えたりします(巨視症、小視症)。また空間的な位置関係に関する歪みが出ることもあります(変視症)。物の見え方がおかしいことも、記憶から失われることなく説明することが出来ます。音が大きく聞こえたり小さく聞こえたりすることもあるようです。
不思議の国のアリス症候群の原因は
上気道炎やEBウイルス感染後、片頭痛、後頭葉てんかんで同様の症状(変視症)が出ることがあります。その他脳炎や髄膜炎、精神病などでも同様の症状を起こすことがあります。
AIWSの10名の報告では、9名が上気道炎後2日から4週間でAIWSを発症したと書かれています。そのうち6名はEBウイルス感染のエピソードがありました。
この10名は4日から3ヶ月ほどで後遺症なく回復しています。
片頭痛の随伴症状や前兆として変視症を起こすことがあります。片頭痛は拍動性の頭痛を主症状とし、光や音で悪化し、睡眠で軽減します。腹痛や嘔吐などを伴うこともあります。
目がチカチカする、物の形が歪んで見える、目の前が暗くなるといった頭痛の前兆を伴うこともあります。AIWSに腹痛を伴った片頭痛の方にバルプロ酸(抗てんかん薬で通常片頭痛に用いるものではありません)を使ったら軽快した、という報告もあります。後頭葉てんかんは、てんかんの原因が脳の後頭葉にあるものです。後頭葉には視覚を司る領域があり、てんかんの一症状として錯視を認めることがあります。脳炎や薬剤などでも同様の症状がでることがありますが、今回は考えなくて良いと思います。今回の場合
症状から上記の不思議の国のアリス症候群(AIWS)と考えられます。ストレスなどはAIWSの発症と関連は無いようです。EBウイルス感染や片頭痛では脳波やMRIで異常は出ないと思いますが、てんかんの場合は脳波で診断されます。EBウイルス感染後のAIWSならば、自然回復が期待できると思います。また、片頭痛やてんかんならば、各々に対する治療(予防)を行うことで症状の軽快も期待できます。原因はこれがすべてではないのですが、受診をするならばまずは小児神経を扱っている病院が良いのではないかと思います。
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