子供の病気に関するお悩みに、現役医学博士の小児科医ユンタ先生がお答えします。

今回は斜頚に関する質問です。斜頚は首の筋肉が原因で起きるもの（筋性斜頚）がもっとも多く、今回も筋性斜頚と思われますので、筋性斜頚（以下斜頚）について述べます。
手術を行うことで斜頚は改善しますが、胸鎖乳突筋（きょうさにゅうとつきん＝真横を向いたときに耳の下から真下に向かって伸びる筋肉です）を切ることになるため、横を向いたときの筋肉の見え方に左右差が出来てしまいます。切る場所を変えると筋肉の見え方の左右差は出にくくなりますが、一方で斜頚の改善が不十分になったり顔面神経損傷が出たりする危険があります。また手術をしても、一部で再発を起こすこともあるため経過観察が必要になります。
年長児の場合、２−３週間はカラーやギプスで固定が必要になります。固定期間が終われば、日常生活に戻れると思います。

斜頚とは

斜頚とは胸鎖乳突筋に腫瘤が出来たり線維化してしまったりすることで起こります。その原因はまだよく分かっていません。そして胸鎖乳突筋が短縮することによって斜頚になります。この結果、首が傾いてしまい、また同時に正常側への動きも制限されてしまいます。一見すると首を傾げたように見えます。
斜頚の多くは１歳から１歳半までの間に経過観察のみで自然治癒しますが、頚部の可動域が30°以上制限される場合は手術した方がよいでしょう。年長児では二次的に顔面や後頭部の変形、脊椎の変形（側湾症）などを来すことがあります。長期間、斜頚があると機能的に問題がなくても顔面の非対称など美容的な問題が出てくることもあります。一般に手術をするならば小学校に入る前までが望ましいとされています。

斜頚の治療

以前は胸鎖乳突筋にマッサージが行われた時期がありましたが、現在ではむしろ有害とされています。そして上記のように斜頚の程度が強いときは手術が行われます。また、１歳半を過ぎても自然治癒しない場合は手術も選択肢になります。
手術は胸鎖乳突筋の上のほうを切る方法、下のほうを切る方法、上下とも切る方法、胸鎖乳突筋の部分摘出など様々な方法があります。
下のほうを切る方法が多く行われていますが、欠点としては胸鎖乳突筋の正常の形が失われることです。具体的には横を向いたときに筋肉の形が出なくなります。
上のほうを切ると胸鎖乳突筋の形は残りますが胸鎖乳突筋の切り離しが不十分になりやすいこと、顔面神経などの神経損傷の危険があることなどのデメリットがあります。
また手術を行わない場合ですが、斜頚の残存や二次的な側湾症などの可能性があります。それがどの程度になるかは個人差も大きく経過を見ないと分かりません。

今回の場合

斜頚があることで顔面の非対称や将来の側湾症の危険性があります。また首を動かすなどの機能に問題がなくても、美容的な問題が生じます。しかし手術をすればすべての問題が無くなるわけではありません（上記参照）。
入院期間や固定の期間は2−3週間程度になるかと思います。長期間斜頚があると胸鎖乳突筋の周囲の組織が萎縮したり硬くなったりしてしまいます。手術をするなら今の時期が良いと思います。
担当の先生の話通り、生命に直結するものではないので、家族、担当医など関係するかたで良く話し合いをして決めていただきたいと思います。